やっちゃんのあぐだもぐだ
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ミヤコザサ線・火の山・氷の山
あっという間に野山は緑が濃くなって行きます。こんな季節に呼応するように、山や植物分布の話を聞く機会が多く、記憶の新しいうちに特に安達太良山について学んだことをご披露いたします。
一つは日本海側植物と太平洋側植物の両方の植物が見られるのが岳地区であり、日本においても特異地点であることの話です。当館の玄関前の谷こと志津川にかかるニコニコ橋を挟んで日本海側植物と太平洋側植物にハッキリと分かれるそうです(植物学者でシーボルト研究の第一人者・加藤僖重氏の講義から)。岳温泉街は標高500m〜600mの東南方向の緩やかな斜面に広がる所にあります。安達太良山を源流とする川が何本もの渓谷を作っております。その一つの志津川の両側のコナラのドングリの付き方が、谷を挟んで北東側は幹から細枝が出てその先にドングリが付く太平洋側植物、谷の西南側が太い幹に直接ドングリの付く日本海側植物のようです。ナラのドングリのように、植物の中には同じ群(科、属、種など)に属していながら異なる分布域を示すものを『対応種』と呼び、世界の偏った地域に分布しています。例えば@カタクリ属やモクレン属は日本と北米、Aアケビは日本と南米、Bレンギョウは日本と地中海、Cシラカバ属やブナ属は日本、中部ヨーロッパ、北米などに対応種としての分布です。日本には大小7000の島があり、本州島は背骨のような脊梁山脈が通り日本海要素と太平洋要素にはっきり分かれます。
  福島県の会津地方は南北40km、東西12kmの広い断層盆地で冬には多量の積雪があり、夏は高気温で全域が日本海型気候に属します。浜通り地方の夏は比較的涼しく、冬は晴天が続き比較的暖かく降水量も少ない太平洋気候区に属します。中通地方は日本海型気候区と太平洋側気候区の中間的要素を示します。中通りの中でも岳地域は日本海側要素の植物と太平洋側要素の植物を見ることが出来る日本にとっても大切な場所です。この対応種が接している場所を日本地図に一本の線でプロットでき、これを『ミヤコザサ線』と名付けられ岳地区は1〜2kmの幅になっており、ドングリ以外の対応種も岳地区に多くあります。
  二つ目は安達太良山の稜線の話。安達太良連峰は南西側から和尚山(1602m)、安達太良山(1700m)、矢筈が森(1648m)、鉄山(1709m)、箕輪山(1718m)、鬼面山(1482m)と連なります。この稜線には常に強い偏西風が吹き付けます。冬期間には岩や樹木に『エビのシッポ』出来ます。もっと日本海側寄りの立山連峰、上越の山々、月山などの豪雪地帯と積雪量は比べ物にならない位の積雪量ですが、冬期間でも簡単に入山でき樹氷やエビのシッポが観察できる山は全国的にも珍しいようです。さらに火山の山であり不気味に口を開ける沼の平の存在は圧巻です。ロープウェイを使えば簡単に山頂に到達できるので、四季を通じて変化のある山を楽しめるのが岳です。日本の立山に氷河があることを発見した飯田肇氏(立山カルデラ砂防博物館)曰く、「安達太良山は『火の山』『氷の山』である」とのことです。
  写真は、日本海側要素と太平洋側要素が対峙する玄関前の志津川のコナラです。さらに安達太良山に登って沼の火山景観を楽しんで、冬になったら稜線の岩山やナナカマドに付く『エビのシッポ』を観察においでください。