やっちゃんのあぐだもぐだ
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岳と土湯の話
岳温泉と土湯温泉間は13kmしかありません。この2つの温泉場を対比すると意外と面白い事に気がつきます。岳温泉の泉質はPH2.48の酸性泉、源泉地から8kmの引き湯をしています。一方、土湯温泉は単純泉で源泉は温泉地の近くです。岳温泉が引き湯なのは、1824年の山崩れで温泉街(当時は陽日温泉)が埋没全滅し、6kmも下部に移転して新天地に移転開業したからです。この時の引き湯の設計者は二本松藩の和算学者、土湯村出身の渡邊東岳であり、いわば岳温泉復興の立役者です。面白いことに、土湯は岳と違って町ぐるみの大移動をしてないので、独特の単語が残っています。その言葉はアラフドとゴンネツです。アラフドとは誰も入らなかった新雪に踏み入る事をいいます。いわばフロンティア精神でしょう。漢字は新踏土のようです。ゴンネツは強熱の漢字が当てられ徹底して議論し尽くすことを言うそうです。今風に言えば、ディベートとでも言うのでしょうか。この2つのポリシーは現代の日本人が忘れかけている大事な事のような気がいたします。特に山間地で生活していく基本原則だと思います。さらに、岳温泉と土湯温泉にはその他も共通する事があります。昭和57年東北新幹線の開業の時、山形県が今では伝説のデスティネーションキャンペーン「紅花の山形路」を仕掛け、わが福島県は何の手も打てなかったので、両温泉の取った奇策は岳がニコニコ共和国独立宣言、土湯がファミリー村の開村でした。この時は、村よりは独立国の方に軍配が上がりました。その後、土湯温泉は持ち前の2大スピリット『アラフド』と『ゴンネツ』を基本に手作りこんにゃくや雉料理で、したたかに町おこしをやってのけています。一方岳温泉は生ゴミのリサイクルから有機肥料作り、有機野菜活用の一旬一品運動から、日本一多様な散歩道を持つ観光地づくりとしてウォーキングを中心にした町おこしに取り組んでいます。今年は、4月から岳と土湯が共同で吾妻・安達太良『湯の里めぐり号』なる東京からの直通バスを往復6000円で7月31日までの運行しています。県内では、別々の市町村にまたがる温泉場が共同で事を仕掛ける事は類まれなる事なので、福島県内ではかなり評判になっています。でも首都圏には都市間バス運行が目白押し、まだまだ共同運行バスが大きな話題になるまでには至っていません。岳は町ぐるみで移転する度に、新規参入事業者やお婿さん、お嫁さんらから新しい血が入り新しい発想が生まれます。土湯にアラフドとゴンネツの単語があるのは、山間部の温泉場で培われた地域おこしの基本原則が強い情念と世間と隔絶できた環境のせいで残ったからに違いありません。両温泉場はお互いに競い合いながら新しい健康保養温泉地づくりに取り組み始めました。写真は吾妻・安達太良『湯の里巡り号』、是非一度お乗り頂きたくご案内いたします。